<<世界で2番目に大きな塩湖・アタカマ塩湖>>

 ただただ、ひたすら何処までも続く上り坂を越え、いよいよ最後のアンデス越えを済ました後、目の前には大きな塩湖が広がっていた。

 サン・ペドロ・デ・アタカマという町についた頃、すっかり日は暮れ、何処か安宿が無いかと探していると、現地の少年が道案内をしてくれ幾つか案内された後、やっと良い宿が見つかった。お礼にチップをあげようと思ったが、いつのまにか立ち去っていた。今までの南米の経験では大抵の場合、チップを要求してくるものなんだが、なんかボ−イスカウトの少年のような印象を受けた。

 荷物を持って部屋に案内される途中でダニエルというチリ人に出会い、彼は「何処から来たんだ?」と、言い、硬い握手を求めてきた。
「日本だ!」
「オオ!日本か?スペイン語は話せるのか?」
「ああ、ほんのちょっとだけだが。」
「それは良い! 名前は?」
「Shinichi(シニチ)!」
「シニチ、お前はピスコが好きか?」
「もっちろん!!!」
「よし、あとで飲もう!キャンプサイトで待ってるから!」
「分かった!」
と、いうのがダニエルとの出会いだった。

 このホテルには部屋とキャンプ場があったが値段的にはUS$1強しか変らなかったのでとりあえずこの日はベッドで寝る事にした。部屋の方はドミトリ−という形でつまり相部屋だった。一つの部屋に幾つかのベッドがあり、外国では大抵が男女の区別は無い様で、時として男としては嬉しいような恥ずかしいような事もある。

 ダニエルに言われたようにキャンプサイトに行くと何人かがテ−ブルを囲んで既にピスコを飲んでいた。ピスコというのはチリのお酒で簡単に言ってしまえば葡萄を原料にして、ウイスキ−のように仕上げたものだった。これがまた強く、コ−ラで割るとすごく甘くなり飲みやすくなってしまいついつい飲みすぎてしまう。

 初対面であるにも関わらず、皆親しくしてくれ、あんまりスペイン語が上手く無いんだ、と言うと、もっとピスコを飲めば舌がまわるようになるからの飲め!なんて言われ、言われるがままに飲んでいると、そのうち眠たくなってきたので先に寝ることにした。ベッドのある所に行こうとすると、なんと足がフラフラで意識している以上に足にきていて、まともに歩く事が出来ないくらいだった。ダニエル達に肩を貸してもらい何とかベッドに辿り着く事が出来たが、本当に危なかった。というのも旅先で見知らぬ人ばかりの所で酔ってしまっては泥棒にあっても分からないし、もしダニエル達が悪い奴だったら身包み剥がされていただろう。幸い彼らはほんとに親切な人々で翌日も心配して様子を見にきてくれたりした。

 翌日からはダニエル達と同じようにキャンプサイトに寝る事にした。と言うのも、ベッドも良かったがやはり全く一人だけの空間を持てるテントの方がゆっくりと気楽で良いからだった。

 この町にはこの町を訪れる人の殆どが参加する3つのツア−があり、それらはアタカマ塩湖ツア−、月の谷ツア−、そして間欠泉ツア−があり、普段はあんまりそういったツア−には参加しないけどここのツア−は見ごたえがありそうなので参加することにした。

 まず、世界で二番目の大きさのアタカマ塩湖ツア−に行ってきたが、かなり期待して行って来たがちょっと期待はずれで残念だった。でもフラミンゴも見れたし、何処までも続く白い大地に夕日が沈んでいくのを見たり、塩湖なんてなかなか見れる物でないのでそういう意味ではUS$10は無駄じゃなかったのかも。まあ、次に行くTatioにある間欠泉は裏切らないと思う。

 朝4:00にキャンプ場を出発し、7:00くらいに標高4500mの高地に到着した。出発が早くツア−用の10人乗りワゴンの中では熟睡してしまったが、車から外に出ると眠気が一気に吹き飛んでしまった。寒い・・・。

 既に他の幾つかのツア−会社から参加している旅行者もいて、みんな御苦労だな−なんて他人事の様に思いながら、その御苦労集団に混じって、間欠泉が出てくるのを待つことにした。
 辺りは無数の間欠泉から立ち昇る煙に覆われ、いくらか寒さが和らいでいた。どうも間欠泉は日の出直後が一番高く上がるらしく、いよいよ間欠泉が出始めた頃、カメラなんかを構えて幾らか写真を撮ったが間欠泉よりも感動したのが、周りにある雪を抱いた山々に朝日が指し込み、徐々に明るく金色に輝いていく姿で、まさに神々が創造した神秘的な世界そのもので、もう間欠泉なんてものはどうでもよくなり、ず−っとその神秘的な山々に見とれてしまった。
 ここに来るまで何度か山々の素晴らしさに涙を流してしうことがあったが、ここの景色は単なる感動というには収まらず、ほんとに神の存在を信じずにはいられなかった。

 このツア−では朝食もついてあり、パンとコ−ヒ−と温泉卵。ただ、この温泉卵も名前だけのもので標高が高いぶん、水の沸点も低く既にゆで卵状態だった。温泉の沸くところに温泉卵あり、というのは万国共通なのだろうか。

 それともう一つの目玉が標高4500mにある天然露天風呂だった。露天風呂があるとは聞いていたがどうせ大したこと無いかな−と思い、タオルなどの用意をしていかなかったのは失敗だった。
 
 3つ目は月の谷ツア−で、辺り一面が月面のようなのでそう呼ばれている。もちろん、月には行ったことがないので実際の月面がどうなってるかは分からないけど、月面だと言われればそうなのかな−って言う感じの程度だったが、日本ではたぶんお目にかかれないその風景はなかなか見ごたえがあり素敵だった。
 また、塩で辺り一面真っ白な世界が広がっていたり、あちこちで塩の結晶に光が反射し、水晶の様にキラキラと輝いている様も魅入ってしまった。
 塩で出来た洞窟もあり、雨がほとんど降らないから今まで残ってはいるんだとは思うけど、それでも何度かは雨が降っていたようで、そこだけ塩が溶けて何本かの筋となって、それがまた不思議な形を作っていた。

 さらに良かったのは夕日が沈む頃に大きな砂丘に登り、沈んでいく夕日をじ−っと眺めるという単純なものだったが、とにかくその景色は見たものでしか分からない素晴らしく素敵な世界が広がっていた。


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